咬合による硬さ判断基準

 ヒトが対象についての判断を行なうときには,ほとんど必ずその対象についての判断基準を 事前にいくらかでも持っている.あらゆる量的な判断には判断の基準と枠組みを必要とする. しかし,ヒトの判断基準というものは,問題とする対象だけではなく,それが置かれる背景に よっても左右されるものである.このような事柄を定性的・定量的に統一的に説明しようとしたのが, Harry Helsonの順応水準理論である.  ヒトには,それぞれ対象の種類ごとに,自分が順応したレベルというもの(順応水準  Adaptation Level)があり,そこを判断の基準,すなわち判断のゼロ点として, 同種類の他の対象の判断を行なうのだといわれている.  われわれ(今井敦子,岩田光生,関 良太,上田直克,古市英史,堀川和徳,田中昌博, 川添堯彬.咬合による硬さ判断の客観的評価への順応水準理論の応用. 日本補綴歯科学会雑誌 39(第94回特別号):190,1995)は6段階の硬度 (JIS規格20,30,40,50,60,70 Hs)を持つ球状シリコーンゴムを背景硬さ, 当該硬さとして,背景硬さに対して当該硬さがどの程度硬いか, 軟らかいかを9段階で被検者自身に判断させ, この判断を基に咬合による硬さ判断の基準である順応水準硬さを求めることにより, 順応水準理論を,物を咬んだときの硬さ・軟らかさの感覚に応用した.



 
 

戻る