共同筋活動
意図された運動は,中枢で形成される運動プログラム(motor program)に沿って遂行され,
末梢の感覚情報によるフィードバックによって修正される。例えば,指令刺激後できるだけ
早く上肢挙上運動を立位で行わせると,姿勢調節筋(同側大腿二頭筋)の活動が上肢の動筋
(三角筋)の活動に先行する。Leeは,この姿勢調節が中枢における運動プログラムによる
共同筋活動であると報告した。以後,神経生理学の領域では,随意運動に伴う姿勢の制御機構が解明されてきた。
ところで,下顎運動を自然で円滑に営む場合においても頭部の姿勢保持は重要な要素である。河野らは,
頭部を体幹に固定することが要求される咬合機能時において胸鎖乳突筋停止部に 筋活動を認め,この活動が
歯に加わる力に比例して増加することから胸鎖乳突筋が頭部の定 位に関与しているのではないかとの報告を行っている。
また,顎運動時における胸鎖乳突筋の 活動についてもいくつか報告されており,同筋が顎機能時における
頭位の制御に関わっている 可能性が非常に強いと考える。われわれ(長砂 孝,田中昌博,川添堯彬,森川正章,
松本真二. 急速な下顎随意運動に伴う胸鎖乳突筋の共同筋活動に関する研究 第1報 咀嚼筋との 活動開始時期の比較について.
日本補綴歯科学会雑誌 37:1232-1237 1993)
は顎機能時の頭位調節機構において,中枢での運動プログラムによる共同筋活動の存在を解明すべく,
急速な下顎随意運動時における胸鎖乳突筋活動を検討した。

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