研究活動(材料部門)
従来からクラウン・ブリッジを製作するための歯冠修復材料として、金属、 有機材料および無機材料を単独にあるいは組み合わせて用いられてきたが、 近年特に、金属材料としては生体親和性が高く、アレルギー性の極めて低い 純チタンが注目されている.さらに前歯部のみならず臼歯部においても審美性が 要求される時代にあって、開発、改良の著しい有機材料の中から硬質レジン およびハイブリッド・セラミックスが、また、歴史的に古くから存在する無機材料 のなかではキャスタブルセラミックスが新素材として脚光を浴びている. 私達の講座では、従来からクラウン・ブリッジに用いられる修復材料について 常に臨床応用することを念頭において材料学的ならびに力学的な基礎研究および 臨床的研究を行ってきたが、最近ではそれぞれ異なった特性を有する 上記3つの新素材に関する検討を行っている.
1)純チタン
純チタンは生体親和性に優れた金属であるにも関わらず、 その操作性の難しさから臨床応用が困難であったが鋳造機や鋳型材などの製作過程 における環境要素が整ったのち、国内でも最も早く全部鋳造冠の臨床応用を試み、 その成果を報告してきた.さらに、純チタンの陶材焼付鋳造冠やテレスコープクラウン への応用を目指し、基礎的研究として鋳型材の熱膨張や加熱方法による強度の変化や 純チタンと歯科用陶材との焼付強度に関する研究を行ってきた. また、最近ではCAD/CAMによる純チタンクラウンやメタルコーピングの製作を試み、 純チタンの歯冠修復物への新たなる応用を検討している.
純チタンの陶材焼付鋳造冠への応用
CAD/CAMによる純チタンのメタルコーピング
完成した陶材焼付鋳造冠ブリッジ
2)ハイブリッド・セラミックス
光重合型硬質レジンは、操作性および色調再現性が容易であることなどから 前歯あるいは小臼歯部の前装鋳造冠やジャケットクラウンに臨床応用されてきたが、 審美性に対する関心の向上から臼歯部の応用へも要求が高まってきた. ところが、既存の硬質レジンの機械的性質ではその大きな咬合力に耐えうることができず、 もっと優れた機械的強度を有した硬質レジンの開発が望まれてきた. そこで臼歯部クラウンへの応用を前提として、90wt%以上の無機質フィラーを充填し、 マトリックスレジンの強度ならびにフィラーとレジン界面の接着強度を強化した ハイブリッド・セラミックスが開発された.その中でも、色調再現性を損なわず 機械的性質を向上させるため大小異なる粒径を組み合わせたハイブリッド型フィラーを 有するエステニア(クラレ)の開発に取り組み、臼歯部へのクラウンのみならず テレスコープクラウンの前装やインプラントの上部構造へも応用している.
上顎小臼歯にエステニアによるジャケットクラウンを用いて審美修復を行った症例
術前(上顎第一小臼歯着色歯による審美障害)
術後(エステニアによるジャケットクラウン)
3)キャスタブル・セラミックス
キャスタブル・セラミックスとは、審美的歯科材料の代表である歯科用ポーセレンが 術者の熟練度に大きく左右される築盛法により製作されるのに対し、金属材料と同様、 歯科精密鋳造に準じた方法で製作されるため成形が容易であるという特徴を有している. この材料は生体親和性、色調再現性に優れているだけでなく、 鋳造されたガラスセラミックスをセラミングという結晶化熱処理を行うことにより エナメル質に匹敵する特性を有することができるファインセラミックスである. 私達は生体に適用される材料は物理的・化学的性質だけでなく化学組成も天然歯と 類似したものを使用すべきであるという概念のもと、キャスタブル・セラミックス のなかでもエナメル質と近似した組成を有するリン酸カルシウム系結晶化ガラスを 用いたクリセラ(九耐デントセラム)の臨床応用に向け、適合試験、接着試験、 色調再現性および耐摩耗性試験などを行い臨床応用を実現し、 現在では多くの症例に適用している.今後、クリセラによるメタルフリーブリッジ の臨床応用の確立を目指していく予定である.
上顎小臼歯にクリセラを用いて審美修復を行った症例
術前(齲蝕とメタルクラウンによる審美障害)
術後(第一小臼歯にはMOのインレー、第二小臼歯にジャケットクラウン)
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