より良い臨床実習を目指して    A2班

 昨年9月から臨床実習に入り、今で約半年間を迎えるが、この間に実習において疑問と感じる点、改善すべき余地があると思えることを取り上げてみた。

☆ システムの問題

@ 患者の『たらい回し』
 
初診で配当された患者で再初診の人は、同じ科でも先生が以前とは変更されていたり、また、○○科から○○科へ治療を依頼する時などは主に学生が先生間の伝達役となるのだが、「私は○○先生の患者は受けない」「○○先生が以前診ていた患者は診ない」など、しばしば先生同士の人間関係に振り回されることがあり、学生自身は困惑し仕方なく他の先生お願いするといった、いわゆる『たらい回し』をやめるべきである。
 最初に学生に患者を平等(同人数でだいたい同じくらいの治療内容になるようにあらかじめ学校側で振り分けておく)に配当し、自分に配当された患者は一年間担当する。今の制度では点数にとらわれ、点数のことを第一に気にかけてしまい生徒間での患者の『たらい回し』をしかねない。


A 点数制について
 
現制度の各科ごと100点以上の症例がなければならないというのに疑問点を有する。症例が「診断科から8Fに配当される確率」、「各科に属する確率」加えて「学生約1/130に配当される確率」を考慮すれば、点数がたまらない可能性は決して小さくはないと考えられる。さらには症例自体は無限であるが、実習期間が一年間である以上それは有限となる。症例を一度でも診る、診ないの経験値としての差は明白であるので改善の余地があると思われる。

B 特別科目について
 
臨床実習において次回のアポイントは【患者、先生、学生】の三者により決められ、やむを得ず特科日と重なることもしばしば見受けられる。これに対して代診を認めない先生がおられ、その旨を伝えると、嫌な顔をされる先生もおられる。特科日に限っては代診を認める制度をつくるべきである。

C カルテについて
 
実習期間中、学生がカルテを見る必要があることも多く、また将来独自でカルテを書いていかなければならないことも考慮すれば、本病院は教育機関であるので他人が読める程度の字で書いてもらいたい。

D ポケベルについて
 
担当医が診療中他のフロアに行かれたり、定刻になっても診療室にこられないことが多く、患者を長い時間待たせることが多々ある。その場合においてのみ学生にポケベルの使用を許可してもらい、指示をあおぐことによって、無駄な時間の削減と、学生診療の質の向上を図れると思われる。

E 教員の質について
 
患者の前や診療室内で大声で学生をしかるのは病院としての品位が下がり、人間性を疑われることもあるかと思われる。最近、新聞で"教官の通知表公開"という題目の記事が記載された。一橋大学では今年度から全科のほぼすべての授業において、学生による5段階の授業評価を実施し結果を教官名を含めて2科目ごとに公開することを決定しているとの内容である。これは"教育を刺激して授業を改善し、教育水準を上げたい"という狙いで大学側が考案したものである。
 このような例に習って、臨床実習における指導医の評価というものを考えてみてはどうであろうか。診療に限局した質問(例、先生としての人格、患者に対する態度の適切さ、診療内容の正確さ、治療に対する意欲や熱意の程度、患者への治療説明の理解度、診療・担当医に対する患者の満足度etc)を学生が評価する。これは"指導医を刺激して診療を改善し、実習の密度を上げる"という狙いである。臨床実習には『学生は担当医の診療を見て診療というものを学び、将来、先生をしていく』という重要な要素を持っている。つまり、より良い歯科医師を目指す為には良い指導医を見て学ばなけらばならない。教官が評価される今日、近い未来、本学においても指導医に対するリコール請求権が必要になってくるであろう。

朝日新聞 H15.1.5から引用

 本病院は他校にはみられない独特な臨床実習システムを採用している。前文のアポイントの決定はもちろん、患者の配当およびその担当制、患者とのマンツーマンの対話など実際に患者にふれての実習であるため、学ぶべきものの質・量は多く、卒業後にもすぐに応用が利くようになっていると思われる。ゆえに学生の臨床に対する意識の向上も図っていきたい

☆ 学生の問題

* 治療内容についてきっちりと理解し、復習・考察を行い、次回の診療の流れ、それに必要であるだろう器具などを把握しておく。
* 患者への連絡忘れや予約忘れを絶対に行わない。
* 臨床実習にふさわしい知識を備えていない者は、臨床実習前に落としておくほうがよい。

 本病院における臨床実習は一年間である。本病院受付にも書かれている『この病院は教育病院である』ように、先生は歯科医師・研究者であるとともに教育者でもあることを自覚し本業と副業を取り違えないようにして頂きたく思う。学生はもうすぐ卒業・歯科医師国家試験を控えた身であり、免許取得直後で先生になるということの重さと自覚を、この実習で形成すべきである。そのためにも指導医、学生いずれも意識の改善が必要である。

 A2班  10井上美香  11今井英貴  12今井裕一  13上杉直斗 14大口直輝  15應谷昌隆 16太原由紀子  17岡田武久