はずれないクラウン A5班

序論
 せっかくセットしたクラウンが脱離すると、患者との信頼関係が無くなってしまうこともありえるので、はずれないクラウンについて考えることにした。


本論
 はずれないクラウンには、クラウン以外の要素として支台歯形成が重要であると考えられる。その中でも「保持力に影響を与える因子」について調べることにした。


@軸面のテーパー
 JφRGENSENは向かい合った軸面が平行な状態から10度のテーパーになるまでの間に、その保持力が際だって減少することを実験で示している(図1)。


図1 (キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966 ハーバードTシリンバーグより引用)


 平行な軸面を持つプレパレ―ションが、鋳造冠に対して優れた保持効果を示すことはわかる、アンダーカットを作らずに平行な軸面を形成することは、臨床的には極めて困難である。また軸面が平行でしかもその軸面が長いような場合は、鋳造冠の適合や合着が非常に難しくなるので、プレパレ―ションには6度の平行関係を与えるのが最良とされている。テーパー状のダイヤモンドポイントやバーを鋳造冠の挿入方向と平行に保持して歯を切削すると、各軸壁に2〜3度の傾斜を与えることが出来る。このような壁が向かい合うとそこに6度のテーパーが出現する。


A表面積
 面積が大きいほど保持力は大となる。同じ円周で同じテーパーの場合は歯冠長の長い方が保持力は大きい(図2)。


図2 (キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966  ハーバードTシリンバーグより引用)

同様に、同じ歯冠長で同じテーパーの場合は円周の大きいほうが保持力が大きい(図3)。


図3 (キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966  ハーバードTシリンバーグより引用)

B高さ
 プレパレ―ションの高さは、挿入方向以外の方向から加わる力に対して、抵抗する重要な要素である。反対側のマージンを中心にして鋳造冠が回転するのを防ぐためには、プレパレ―ションの軸面に十分な高さを与える必要がある(図4)。


図4 (キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966  ハーバードTシリンバーグより引用)

 外壁の傾斜度が強くなるにしたがって、プレパレ―ションの高さを高くしないと、脱離力に対する抵抗作用は減じてくる(図5)。


図5 (キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966  ハーバードTシリンバーグより引用)


C歯の幅径
 直径が小さく軸壁の低いプレパレ―ションでは、離脱の弧は(r1)を持ち、@の部分が弧を妨げる。左のプレパレ―ションは、壁の高さが同じで直径の大きい右のプレパレ―ションに比較し、側方圧に対してはるかに大きな抵抗力を示す。前に、二つのプレパレ―ションの高さが等しい場合は、円周の大きいものの方が挿入方向から加わる力に対して優れた保持効果を示す、と説明したことに相反することになる。そこで大きなプレパレ―ションは、回転力に対して極めて抵抗力が弱いということを、合わせて知っておく必要がある(図6)。


図6 (キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966  ハーバードTシリンバーグより引用)

 軸壁が低く直径が大きいプレパレ―ションの軸面にグルーブを形成すると、回転半径がrからrに減じるから、離脱に対する抵抗(@の部分)は増大する(図7)。


図7 (キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966  ハーバードTシリンバーグより引用)

結論
 このような条件を守ることによってクラウンの脱離を防ぐことが出来、患者との信頼関係を保つことが出来るのではないだろうか。

引用文献
 キャスト・ゴールド・プレパレ―ション 医歯薬出版 1966  ハーバードTシリンバーグ