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大阪歯科大学

このほど、大阪歯科大学と立命館大学は口腔・リハビリテーション・栄養コンソーシアムを結成し、3月29日、立命館大学大阪いばらきキャンパスで設立総会を開催しました。このコンソーシアムは、昨年8月に締結された両大学の学術交流協定に端を発するもので、フレイル予防の促進や、口腔・リハビリテーション・栄養によるQOLの向上に対応した共同研究を立ち上げ、社会課題の解決を目指した社会実装を実現することを目的としています。

総会の冒頭、発起人を代表して本学の馬場俊輔・医療イノベーション研究推進機構(TRIMI)機構長が挨拶し、「高齢者が抱えるさまざまな問題を現場から抽出し、みなで現場に落とし込めるようにドライブをかけていきたいということで、このコンソーシアムを立ち上げることになった。立命館大学と大阪歯科大学、そして両大学が共に提携する大阪介護老人保健施設協会。この3者のトライアングルの中でコンソーシアムを推進していきたい。介護分野の生産性向上に向けて、独自に開発し、現場に着地できるような糸口を見つけられれば」と抱負を述べました。
来賓代表挨拶に立った本学の川添堯彬理事長・学長は「このコンソーシアムの設立が高齢者のQOLの向上、フレイル予防の促進、介護サービスの持続可能な発展に向けた大きな一歩となるよう願っている。企業、大学、介護施設——みなさまの豊富な経験と専門知識を生かし、共に新たな価値を創造しましょう」と呼びかけました。

次いで、参加会員の報告があり、幹事会員は大阪歯科大学、立命館大学、公益社団法人大阪介護老人保健施設協会(大老協)、アース製薬株式会社、エヌ・デーソフトウェア株式会社、TOPPAN株式会社、株式会社ナリコマエンタープライズ、株式会社ペースノート、株式会社モリタの9組織。一般会員は株式会社タニタというメンバーで出発することになりました。
議事に入り、第1号議案「役員選出」の件は、会長に馬場俊輔大阪歯科大学教授・TRIMI機構長、副会長に肥塚浩立命館大学教授・医療介護経営研究センター長と光山誠医療法人敬英会理事長・大老協理事、幹事は幹事会員の各企業から1名、監査委員は大老協の木場康文事務局長とする提案がありました。
第2号議案「事業」については2024~2026年度の3カ年、共同研究として、介護保険の政策(報酬改定動向)に則し自立支援・重度化予防を背景とする口腔・リハビリテーション・栄養の一体的取組に関する調査研究事業を、大老協会員法人等のデイケアをフィールドに行う旨の説明がありました。そのほか、会則を変更してコンソーシアムに「顧問」を置くこととし、本学の川添理事長・学長、大老協の川合秀治会長、立命館大の徳田昭雄副学長が顧問に就任するなど全4議案が承認されました。

引き続いて、本田幸夫・東京大学大学院特任研究員により「AMEDロボット介護機器開発等推進事業から考える高齢者口腔ケアテクノロジーの未来」と題する基調講演が行われました。「イノベーションを社会実装するときに一番重要なのは行動変容を起こせるかということ。介護ロボットが普及しないのは、行動変容を起こせていないのが最大の問題だが、今後は変わる。人手不足が非常に厳しいので、これからはチームの一員にロボットが入ってくると思ってください」などと解説。「超高齢デジタル元気社会の実現には、口腔ケアは最重要課題。日本・世界をリードする活動を」とコンソーシアムへの期待を語ってくださいました。
次に、本学医療保健学部の糸田昌隆教授が「口腔・リハビリテーション・栄養分野における医療と介護の制度について」と題して講演。「口腔ケア・リハビリテーション・栄養管理は三位一体で取り組まなければならないが、実際は別々で動いている。医療現場によって目標や目的が違うので、サービスの提供の仕方や評価、重みづけが各病院・施設で異なる」といった現状を報告しました。
本学TRIMI事業化研究推進センターの谷城博幸教授は「口腔・リハビリテーション等の医療・介護・福祉機器開発の支援について」と題して、「在宅、介護施設では診断・測定等のリスクが低い医療機器や、ケア用品といわれる非医療機器が重要で、これらは規制のハードルが低い。口腔・リハビリテーションには今後、介護現場の負担を軽減する技術が求められるのではないか」との考えを示しました。そのうえで、「介護・福祉機器は、それらを要求する患者さんの態様がさまざまなため、医療機器より開発が難しい。カスタムが基本」と指摘。「現在は、保険療養費に係る製品のリスト化が行われ、しっかりと評価されたものに保険支払者が償還を決定するのが原則になりつつある。TRIMI事業化研究推進センターでは、このコンソーシアムの中で開発されたものについて、老健施設でのフィールドテストを実施可能とする体制を検討するなど、製品評価のサポートをさせていただきたい」と語りました。

閉会に際し、光山誠副会長があらためてコンソーシアムのキーワード——①自立支援、重度化予防、②介護現場における生産性向上、③フレイル予防(サルコペニア予防・ロコモティブ予防)、④リハビリテーション機能訓練、口腔、栄養の一体的な取組の推進——とスキームモデルを示し、設立総会は終了。その後に開かれた交流会で、川合顧問は「事業化される場合は、必ず一気通貫の精神に加えて、それぞれのパードでカスタマイズする努力をしてもらえたら」とコメントし、祝杯を挙げました。

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