細菌学講座

なぜヒトは虫歯になるのか? 口の中に生息する菌を究め、そのメカニズムを解き明かす

 細菌学講座では、目に見えない微小な生き物である微生物と、これらに対応してヒトの体を守る免疫応答について学びます。ヒトの体には膨大な数の微生物が生息しており、一説によると私たちの体重のうち、1~1.5kgを占めるとも言われています。歯科医師を目指す学生諸君は、特に口の中に生息する細菌についてしっかりと学ぶ必要があります。なぜなら、口腔(こうくう)の二大疾患と言われるう蝕(虫歯)と歯周病は、普段から私たちの口の中にいる、常在細菌と呼ばれる微生物によって生じる感染症だからです。口腔細菌のほとんどが私たちと共に暮らす、穏やかな性質の持ち主ですが、ときに豹変して、私たちの体にさまざまな病気を引き起します。私たちの研究室では、25年前から口腔細菌が持つ病原メカニズムについて研究を進めています。なかでも、ネバネバした多糖体からなる粘性物質を産生し、バイオフィルムと呼ばれる細菌と多糖体で構成される膜状の構造物を形成する細菌を追いかけています。各臨床講座との共同研究では、数多くの臨床症例からバイオフィルムを形成する細菌を分離し、分子生物学的手法を駆使して、病原性を発揮するためのメカニズムについて詳しく調べています。
 微生物と聞くと、目に見えない怖い存在と思われがちですが、正しい取り扱い方法を学ぶことで安全に実習・実験を行うことができます。実際に、細菌学講座で実験に取り組んだ学生の中から、全国の歯学部生で競う研究コンクール(スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラム:SCRP)における優勝者が出ています。微生物を取り扱う以上、指導は厳格ですが、いつも学生に開放された研究室ですので、講義・実習・学生研究を通じて、大いに微生物学・免疫学の深みを覗きに来てください。

◉Message

 微生物の取り扱いには細心の注意が必要ですので、実習・実験には緊張感と集中力を高めて臨んでもらいます。普段はとても明るく開放的な講座ですので、興味のある人はどしどし訪ねてきてください。

◉Members

  • 教授/王 宝禮
  • 准教授/山中 武志
  • 講師/山根 一芳、真下 千穂、
       南部 隆之
  • 助教/円山 由郷

研究活動

口腔バイオフィルム形成細菌の病原性
 細菌学講座では25年前から、粘性物質を産生する歯周病原細菌プレボテラ・インターメディア/ニグレッセンス(Prevotella intermedia/nigrescens)を主体に、その病原メカニズムについて研究を進めています。

バイオフィルム形成細菌の走査電子顕微鏡像02

 近年さらに、バイオフィルム形成性を維持したロシア・ミューシラギノーサ(Rothia mucilaginosa)やアクチノマイセス・オリス(Actinomyces oris)についても臨床講座との共同研究で分離・保存することに成功し、詳しく性状を追求しているところです。バイオフィルム形成に関わる遺伝子発現調節機構とバイオフィルム形成性が宿主免疫に及ぼす影響が研究の中心となっています。

  1. 口腔バイオフィルム形成に関わる細菌の遺伝子発現調節

     細菌にトランスポゾンを挿入し、バイオフィルム形成能を失った変異株(KO株)を分離する。その周辺遺伝子を読み取る。親株に存在する当該遺伝子をプラスミドに挿入し、プラスミドをKO株に入れ、バイオフィルム形成能の回復を確認する。

  2. バイオフィルム形成性が宿主免疫に及ぼす影響
  3. バイオフィルム形成抑制メカニズムの解明とバイオフィルム感染症治療に関する研究