CLOSE

大阪歯科大学

EPISODE012

たくさんの人生と一緒に進む、身近な歯科医師に

2018.4.27 歯学部 / 6年
島岡 毅

PAST

1これまで

1年次に低迷していた成績 努力重ね上位に

小学生の頃は社会科が好きで、社会の先生になろうと思っていたと話す島岡さん。勉強が得意だったわけではありませんが、歴史漫画が好きで、社会科の先生になって歴史の面白さをたくさんの人に教えられたらと思っていたそうです。お父さんが歯科医師ですが、同じ道に進もうとは思っていなかったのでしょうか?「むしろ父に治療された時、歯医者って怖いところだなって。もう絶対に行かないでおこうと思っていたくらい」と笑いながら振り返ります。「そう思っていたんですけど、進路を決める高校生くらいからだんだんと、手に職をつけたいと考えていて、たとえばお医者さんってすごいなと。そういえば父も歯のお医者さんだな、と思うようになったんです」。本学出身のお父さんの勧めと、家から近いこともあり、本学を受験しました。

大学では、何事も積極的に取り組めるようになったといいます。「オープンキャンパスで高校生の前で授業したり、部活動や海外研修に参加したり。いろいろなことに積極的に参加して、たくさんの人と話せるようになって、成長したかなと思います」。大学入学前は、そういったことは面倒だと感じ、参加しないことが多かったそうです。「昔は勉強もおざなりでしたが、今は学ぶことがそのまま患者さんの診療に繋がるし、すごく面白くなってきて、歯科って奥深いと思えるようになりました」。4年生では、SCRP(Student Clinician Research Program:全国の歯学生による研究発表の大会)にも挑戦。「こういう研究がしたい、ああいうことをしてみたいというときに、先生方が、こうしてみる?ああしてみる?とたくさん意見をくれるし、してみたいことを何でも積極的にさせてくれる。研究だけじゃなく、勉強や実習でも」。考えていることに、積極的に挑戦できるようになりました。

さらに歯科を学ぶ中で、自分なりに考えることが増えたそうです。「歯科は医療の中で唯一、初めから終わりまで診ることができる。医者って、病気になってから行くじゃないですか。でも歯科は、小さい頃から検診に行ったりと身近な存在で、学校でも給食の後で歯みがきをする。すごく身近であることは歯科の魅力の一つかなと思っていて、その人が成長するとともに自分の歯科医師人生も一緒に進んでいく。人生に寄り添うことができるんですね」。そう考えるようになったのは、特に5年生の病院実習の時からでした。
患者さんと触れ合うようになり、患者さんが喜んでくれて嬉しいと思うときもあれば、すごく悲しいと思うときもあったといいます。「嬉しいのは、患者さんが治療して良くなっていくのを見ることとか、患者さんから、ありがとうとか上手だねと言われること。悲しいことは、口腔外科で頸部郭清(けいぶかくせい)の手術をしたおばあちゃんがいて、手術は大変でしたが、終わってから、取れたよ、がんなくなったから良かったねという話をしていたんですね。しばらくして、きょうみたいに晴れた日に退院で、先生も、きょうは良い日だね、こんないい日に退院できて良かったねと話していて。でもしばらくして、おばあちゃんにまたがんが見つかっちゃってね、って聞いて。あんなに良くなったのに、またできちゃったんだなって思うと…」。がんをなくせるようにしたい、と強く思った瞬間でした。歯科医師は医師と違い、触れることができる部分は首から上という狭い範囲ではありますが、その範囲の中でも、誰かの人生のために貢献したい、と思ったといいます。「その経験から、歯科医も人の命に関わる職業なのだと実感しました」。

PRESENT

2

『歯科医師』を楽しんでいこう

コロンビア大学歯学部への海外研修には、絶対に参加すると決めていたという島岡さん。「面白そうだと思ったし、アメリカの歯科医療を見ることができるなんて、滅多にない機会。これは、またとないチャンスだと思いました」。ところが小さな頃から海外には興味がなく、英語が苦手だったことから、海外に行くなんてとんでもないと思っていたそうです。それでもアメリカの歯科医療に対する興味が勝り、研修に応募しました。

「実際に行ってみると、最初に思ったのは、文化ってこんなに違うんだということ。アメリカを目にして、世の中ってとても広いんだなと驚きました」。多国籍の人たちが、一緒に仕事をする。その様子は、島岡さんの驚きをさらに深めました。
「アメリカでは、歯科医の皆さんがとても楽しそうでした。日本では、真面目に真剣に診療しています。これは日本人の良い所だと思うんですが、アメリカでは診療中に音楽をかけたり患者さんと楽しそうに話していたりして、それぞれが自分のしやすいように仕事をしている。このことは僕の中で、とても印象深かったです」。
また、コロンビア大学の学生から学んだことがあります。「勉強の意欲の高さですね。向こうは4年制の大学を卒業後、歯科医師になるので、すぐに患者さんの治療に直結する勉強意欲の高さは、僕らと違うものがありました」。

今回の研修では、『楽しむ』ことを知りました。「向こうの人はすごく楽しそうだったけど、やる時は真剣にやる、このギャップがいい。楽観的というか、アメリカで楽しそうに仕事をしている人たちを見たら、僕もこれから自分が就く仕事を楽しんでいこうと思ったんです。参加前は、勉強は真剣に一生懸命にしていましたが、今は少し柔らかくなったというか…投げやりではなく、いい意味で気を抜いてできるようになったのかなと思います」。

FUTURE

3これから

人生に寄り添う歯科医師に

「今後は、やっぱりアメリカ、そして予防歯科が盛んなヨーロッパなどの海外で学びたい。日本は高齢者歯科や再生医療が流行っていますが、その国々で特長のある歯科治療ってあるんです。自分が歯科医師になったとき、この歯科治療について詳しく学びたいと思ったら、そこに特化している国に学びに行ってみたい」と笑顔を見せる島岡さんは、現在6年生。「大学でやり残したことはないと思うくらい、いろいろなことをした」と振り返ります。「すごく充実した大学生活でした。今は、将来の歯科医療がどうなるか考え、自分の技術を上げるためにはどうしたらいいのか、自分を高めるために今後どうしていったらいいのか考えています。何かをするというよりは、この1年間を使って作戦会議をしているような感じ。最終的にどういうステップで開業医になろうかと、考えている時間です」。開業医になる前に、自分のしたいことをしてからなりたい。大学院進学や、学校の先生になってみてもいいかな、と考えているといいます。

最終的な夢は、歯科医師になり、患者さんに喜んでもらうこと。「現在の歯科の流れでは、全身疾患と言われ、医科との連携が必要とされている。それが大事なことだとは分かっていますが、今、僕が歯科医になるときに一番基礎として大事なことは何かなと考えたら、歯を残すことじゃないかな」と話す島岡さん。そこで、歯を残す分野——保存や歯内治療、そして歯周病に興味を持っています。「今ある歯をしっかり残す。むし歯になってもちゃんと元の状態に戻して機能させるということが一番大事なんじゃないかなと思って、今は保存系のこの三科目にすごく興味がある」。細菌や免疫も面白いと思っているといい、勉強は点数を取るためではなく、純粋な学問として学んでいくことが楽しいといいます。「へえそうなんだ、とか、知らなかった、ということが多くて、それが僕の勉強のモチベーションになっていますね」。

大阪歯科大学は、自分にとって『人生のターニングポイント』と話します。「ここに来たから、本当に人生が変わったというか。自分を変えてくれた場所だと思います。ここに来てなかったらどうなっていたんだろう、といつも思います」。高校生の時には成績が思わしくなく、先生に歯科医は無理だよと言われていたといい、諦めようかと思ったそうです。しかし、ご両親が「最後まで諦めるな」と励まし、背中を押してくれました。「中学まで勉強していなくて、高校になって歯科医になろうと思って勉強したけれど、最初は本当に成績が上がらなくて。あの経験があったから、今の自分がいるのかなと思います」。

患者さんに歯科医師だと思われたくない、と話す島岡さん。「たとえば患者さんが歯科以外のこと、口の健康だけじゃなくて心の健康なんかも相談してくれるような、身近な存在になりたいですね。普通の健康相談でもそうですが、だからこそさまざまな知識が必要だと思います。歯ではなく、体のこの部分が良くないのですがどうしたらいいですか、と言われたときに、こうしたらどうですかと的確に答えられるような、安心感のある歯科医師になりたい。いつも思うのは、歯科の悩みがないときにも来てくれたらいいのにっていうこと」。誰もが気楽に来られるような歯科医院をつくることができれば、地域の皆さんの健康状態が改善し、歯科は怖いという印象もなくなっていくかもしれない、といいます。歯科を通じて多くの人生に寄り添い、共に歩むこと。自分の仕事を楽しみ、生きたいように生きること——島岡さんにとってそれは、決して不可能なことでも、遠い未来のことでも、ありません。

PROFILE

2018.4.27 歯学部 / 6年
島岡 毅