いきさわやか(口臭)外来について
近年、口臭の悩みを持つ方が増えています。特に、若い方は、口臭のことが原因で内向的な性格となり、口臭の有無にかかわらずそのことが気になる、口臭心身症(自臭症)といわれる症状 を持つ患者さんも少なくありません。口臭の原因の多くは、歯磨き等の日常の口腔ケアにあるといわれています。しかし、中には歯周病や他の病因によるものもあります。「いきさわやか(口臭)外来」では、口臭検査装置により口臭の有無を数値化して調べるとともに、下記のような口臭の原因を調べた上で、適切な治療を行います。また、患者様の心理的なケアについても配慮して、治療を進めています。
症状 |
口臭が気になる |
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治療法 |
口腔内清掃指導、歯周病治療 |
検 査 | 口臭検査 |
担当科 |
歯周治療科 本館9階 (TEL)06-6910-1087 |
診療日 |
月曜日・午前中(8:45~11:30) |
料 金 | 口臭測定は「自費診療」 |
口臭の原因
口臭には、生理的な口臭(表1)と病的口臭(表 2、3)とがあります。なかでも、病的な局所的要因の口腔清掃不良(歯がみがけていない)、すなわち、プラークコントロール不良に起因したものが、口臭の原因として、最も大きいとされています。
表1 生理的な口臭
- 増齢
- 早朝
- 空腹
- 月経時
- 緊張性
表2 病的口臭(全身的には)
- 消化器官
- 鼻疾患
- 呼吸器疾患
- 糖尿病
- 肝臓病
- 尿毒症
表3 病的口臭(局所的には)
- 齲蝕(大きな虫歯)
- 不適合歯冠修復(かぶっているものがあっていない)
- 歯冠修復物の脱離(かぶっているものがはずれている)
- 歯周病を有する場合
- 口腔清掃不良(歯がみがけていない)
口臭検査装置
口臭の元とされている悪臭成分は、表4に示すアンモニアや硫化水素などですが、これらを実験的には、大きな設備を必要とするガスクロマトグラフィーにより分析する方法があります。しかし、実際の臨床の場では、一般的に、主観的な方法として嗅覚により判定(官能試験)するか、客観的な方法として口臭検査装置により口臭を測定します。
「いきさわやか(口臭)外来」では、口臭成分としては有名なメチルメルカプタンあるいは揮発性硫化物ではなく、アンモニアをターゲットにした口臭検査装置(アテイン)(図1)を開発し、それを臨床の場で応用しています。
表4 悪臭成分
- アンモニア
- アミン類
- 硫化水素
- メチルメルカプタン
- インドール
口臭と歯周疾患との関係
健常者、すなわち、口臭がしない人のアンモニア濃度の測定結果は、16ppm以下であり、その数値が正常範囲と考えています。一方、歯周疾患があり、明らかに口臭のある患者様を対象として、アンモニア量とプラークの蓄積量および歯肉の炎症などの臨床症状、ならびに歯周ポケット(歯周組織が正常ですと歯と歯肉の間隙は1mm程度ですが、歯周疾患が進むと4mmとか5mmとか、その間隙も深くなります。)内の顕微鏡でみた、総微生物数および運動性微生物の構成率(歯周ポケットが深かったり、歯肉に炎症があったりするとこれらの数値が高くなります。)を調べると、アンモニア量との間に相関傾向を示し、とくに臨床症状の中でのプラークの蓄積量および歯周ポケット内微生物との間には有意な正の相関性が認められました。
また、歯周疾患があり、口臭のある患者様の初診時と、主としてプラークコントロール(ブラッシングなどの指導)およびルートプレーニング(歯石を除去したり、根面を平滑にしたりすること)など基本治療終了後の口腔の状態を比較しました。その結果、臨床症状および歯周ポケット内総微生物数ならびに総微生物に占める運動性微生物の構成率は、初診時と比較して基本治療後の方が顕著に改善され、それにともなって、アンモニア量も初診時と比較して基本治療後の方が数値は低下していました。
このように、口臭の大きな要因である歯周疾患を治療することで、口臭は確実に改善されます。
目に見えない審美治療としての口臭治療
情報開示という時代を反映して、歯科医院の広告にも審美歯科という文字を目にする機会が多くなりつつあります。しかしながらその多くは、歯科矯正、前歯の歯冠修復・補綴あるいはホワイトニングなど目に見える審美治療です。目に見えない審美治療、すなわち口臭治療は社会構造あるいは文化が欧米化されるにつれ、そのニーズは高まってきています。また、前述したように、この口臭治療は心の病を持った患者様を対象とすることが多く、とくに、そのような患者様には、悩んでいないで一日も早く来院していただき、早期にその原因を見つけ、治すかということが重要なポイントだと考えています。
市販の各種口臭消臭剤の効果について
1.口臭消臭錠剤およびフィルムについて
実験に供した口臭消臭錠剤9種およびフィルム1種の口臭消臭効果を示したのが図2です。その結果、まず口臭消臭錠剤およびフィルムについては、実験に供した10種の口臭消臭剤ともに、投与あるいは口腔内または舌の上で溶解あるいは噛ませ溶解させた場合のいずれにおいても、即座にアンモニア量は低下しました。しかしながら、その後、経時的に後戻りの傾向を示し、実験に供した各種消臭錠剤あるいはフィルム間に差が認められました。すなわち、口臭消臭キャンディー「ノン」®(以下「ノン」とする)が最もその効果が強い傾向が認められました。
2.口臭消臭スプレーについて
実験に供したスプレー4種と口臭消臭錠剤およびフィルムで一番消臭効果の高かった「ノン」とを比較したのが図3です。実験に供した4種のスプレー剤ともに、スプレー直アンモニア量は低下しましたが、各スプレー間に口臭消臭効果の後戻りに時間的なずれがあり、塩化亜鉛配合のハイザック®スプレーが、口臭消臭効果が強く、持続時間も長い傾向が認められました。しかしながら、対照として使用した「ノン」がいずれの口臭消臭スプレーより、口臭消臭効果が強く、持続時間も明らかに長いということが確認できました。
3.口臭消臭リンス剤について
実験に供したリンス剤4種と「ノン」とを比較したものが、図4です。実験に供した4種のリンス剤はともに、リンス直後にアンモニア量は低下しましたが、後戻り傾向が強く、塩化亜鉛配合のリンス剤ハイザック®が、口臭消臭効果が強く、持続時間も長い傾向が認められました。しかしながら、対照として使用した「ノン」がいずれの口臭消臭リンス剤より、口臭消臭効果が強く、持続時間も長いということが確認できました。
以上の結果から、前述したような口臭の原因が確認できたとしても、その原因を除去するには時間を要する場合、あるいは自臭症のような患者様には口臭はないという自信をつけていただくために、日常臨床の場において治療の一環として、口臭消臭剤を使用する傾向が高まりつつあります。しかしながら、多種市販されている口臭消臭剤の中にあって、どの薬剤の口臭消臭効果が高く、持続効果があるかは不明でした。それらのことをわれわれの実験で明確にすることができました。したがって、これらの結果は今後、実際の臨床の場における自臭症を含め口臭を訴えて来院する患者様の治療に、大いに役立つものといえますし、現在、専門(いきさわやか)外来でその治療を行っています。