CLOSE

大阪歯科大学

生命予後、
健康寿命の延伸をしっかり
噛める義歯で実現する!

我々の講座は、学生さんに対する教育として「部分床義歯補綴学」、すなわち歯を失った部分を補うために、残存する歯を土台とした患者さん自身が着脱可能な義歯を提供することで、正常な口腔の機能を回復する学問を担当しています。また、日常の臨床では、歯を失った状態に対して人工の歯を提供する治療(補綴歯科治療)を中心に、患者さんの口腔の機能や審美的な問題の解決にあたっています。噛めないという状況(咀嚼障害)だけをとってみても、歯を失った状態という器質的な問題だけではなく、咀嚼に関わる顎の関節や筋肉に問題がある状況(例えば顎関節症)や、脳卒中後、認知症といった全身疾患など、その原因は多岐に渡ります。我々はそのような問題を根拠に基づいて診断し、問題を解決可能な複数の方法の中から、最もフィットする治療法を個々の患者さんと伴に決定し、提供しています。
以前より、残存する歯の数が少ない人は寿命が短くなるということは多くの研究から示されてきましたが、最近では歯を失った状態に対して放置せずに、補綴歯科治療を受けて歯の数を維持している事の方が、平均寿命や健康寿命に対してより強い影響を与えるという事実が知られるようになりました。さらに、この全身健康に対する補綴歯科治療の効果は、しっかり噛めると実感できる義歯を使用している人ほど、良好な栄養状態の維持を通して高くなっていることも明らかになっています。このように、補綴歯科治療の提供は、生命予後に直結する仕事です。我々は、そのことを十分に認識するとともに、やりがいのある仕事に対して誇りをもち、常に成長を目指して日々努力を続けています。

研究室のメンバーMEMBER

教授/前川 賢治
  • 講師/山本さつき、三野卓哉、黒﨑陽子
  • 助教/坂井大吾、田代悠一郎、西崎真理子、乾志帆子、 高尾誠二
  • 大学院生/王 欣、壺内治光、内藤達志、何 君、冼 芷熙、鄭 嘉廷

学生へのメッセージMESSAGE

歯科治療に関する治療概念、臨床術式は、急速なデジタル化の進展に代表されるように常に進歩を続けており、歯科医師となった後も生涯学び続けることが必要です。本講座では標榜可能となった補綴歯科専門医だけではなく、顎関節症や口腔顔面痛、口腔リハビリテーション等に関する様々な専門医取得が可能です。専門医の取得と常に自身をアップデートできる環境を整え、一緒に頑張ってくれる方々をお待ちしています。

研究活動

本講座では、咀嚼機能が全身機能、認知機能に与える影響を明らかにすることを目的とした、臨床疫学研究,基礎研究を展開しています。臨床疫学研究は、関西圏の地域在住成人、高齢者を対象としたフィールド研究から、口腔内の状況、咀嚼機能と健康寿命、認知機能の関係を解明する研究を進めています。また、両者の関係を構築する生物学的メカニズムを理解するため、上記の研究対象者から採取した生体サンプルや実験動物を用いて検討しています。その他の研究として、現在の口腔インプラント治療において最も解決が急がれているインプラント周囲炎の新規治療材料の開発や、インプラント治療の精度を高めるために、デジタルデバイスを駆使した検討を進めています。
今後も、臨床における疑問を解決するための研究を計画するとともに、口腔内の形態回復、咀嚼機能の回復の域を越えた、全身健康の向上に寄与できる歯科補綴学的研究を推進していく所存です。

  1. 習慣(日常)的な咀嚼運動「よく咬むこと」が認知機能の低下予防やアルツハイマー型認知症の発症予防に寄与するかを明らかにするために、兵庫県丹波篠山市在住の高齢者を対象としたコホート研究を実施しています。
  2. 咀嚼運動が認知機能に与える影響の機序の解明を目的に、咀嚼運動と認知機能を繋ぐ中間因子として脳由来神経栄養因子(BDNF)に着目し、大阪府吹田市在住の高齢者を対象としたコホート研究を実施しています。
  3. 咀嚼機能が全身健康に与える影響を生物学的に理解するため、特に咀嚼筋機能に着目し、咀嚼運動により筋組織内で発現する特異的なマイオカインの網羅的検索と機能解析を進めています。
  4. 咀嚼機能の喪失が認知機能の変化を惹起するメカニズムを解明するにあたり、マイクロダイアリシス法を用いて、脳脊髄液中の認知症関連因子の経時的な発現動態を中心に検討しています。
  5. インプラント周囲炎の新規治療法の開発を目指し、強力な骨接着性を有する機能性多糖体を足場として、感染制御と早期骨再生を実現する高機能ドラッグデリバリーシステムの構築を進めています。
  6. インプラント埋入精度の高い静的サージカルガイドプレート製作法の確立を目的に、CT画像と口腔内表面形状画像を最も精度高くマッチングすることが可能となるリファレンスマーカーに関する材料学的検討をしています。
  7. 歯科医師(術者)の習熟度を問わず精度の高いインプラント埋入を実現するために、埋入偏差(ズレ)の最小化を可能とする人工知能(AI)による静的サージカルガイドプレート自動設計システムの構築を目指しています。
  8. インプラントオーバーデンチャーと比較し、システム非依存的なインプラントクラスプ義歯(固定性インプラント上部構造にクラスプを付与して維持する義歯)の有効性を検討するため、高齢者を対象とした横断研究を実施しています。

競争的資金獲得状況(採択中のみ)

2024年度採択

  • 「光触媒性材料のピーニングによる抗菌性を付与した義歯床の創成」
    科学研究費(基盤研究(C)):研究代表者 田代悠一郎(研究期間2024−2026年度)
  • 「長期的抗菌性維持を目指す新規セラミック材料の開発」
    科学研究費(若手研究):研究代表者 高尾誠二(研究期間2024−2025年度)
  • 「食事時の咀嚼運動習慣が認知症の発症に与える影響:地域在住高齢者コホート研究」
    8020推進財団奨学寄附金:研究代表者 三野卓哉(研究期間 2024年度)

2023年度採択

  • 「マスティカトリマイオカインの概念確立による咀嚼筋機能の新機軸」
    科学研究費(基盤研究(C)):研究代表者 前川賢治(研究期間2023−2025年度)
  • 「歯の喪失が惹起する脳脊髄液中認知症病態関連因子のダイナミック動態解析」
    科学研究費(基盤研究(C)):研究代表者 山本さつき(研究期間2023−2025年度)
  • 「感染抑制と組織再生を一括制御するインプラント周囲炎治療薬剤複合体の創製」
    科学研究費(基盤研究(C)):研究代表者 呉本晃一(研究期間2023−2025年度)
  • 「骨免疫調節機能を持つインプラント周囲炎予防デバイスの開発」
    科学研究費(若手研究):研究代表者 西崎真理子(研究期間2023−2024年度)
  • 「酸化チタンナノチューブのゲル化による新規骨再生デバイスの創製」
    科学研究費(若手研究):研究代表者 乾志帆子(研究期間2023−2024年度)

2022年度採択

  • 「咀嚼が唾液中BDNFならびに認知症発症に与える影響-ヒト高齢者を対象とした研究-」
    科学研究費(基盤研究(C)):研究代表者 三野卓哉(研究期間2022−2024年度)
  • 「高齢者の固定性インプラントを活用したシステム非依存的補綴治療介入の有効性の検討」
    科学研究費(基盤研究(C)):研究代表者 黒﨑陽子(研究期間2022−2024年度)