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大阪歯科大学

未来を担う子ども達のための包括的口腔健康科学

発育期にある子ども(胎生期~思春期終了)の口腔の健康を、『疾病科学』と『健康科学』の二面からとらえ、『病気を予防する』『健康を増進する』という視点から確立することを目的として、国際的に貢献できる教室となることを目標としています。具体的には、世界に通用する研究成果をあげ、その成果を国際的学術雑誌に発表し、世界に挑戦し続ける研究室を作ることです。こどもの人権を尊重し、小児と保護者の心理が理解できる、世界レベルの知識、技術および品格を有する小児歯科医師を養成いたします。また、小児歯科学、小児歯科医療が発展途上である国々へ出かけ、その国の歯科医療担当者の知識・技術の向上に貢献するとともに共同研究を行います。
臨床では、「老後にいたるまで全ライフステージを健やかに過ごすためのたくましい健康を獲得するために、小児期に健康意識、健康行動および口腔健康増進を育む」ことを使命とし、新生児期から成人するまでの健康児、障害児および有病児、すなわち全ての小児を対象に、長期口腔保健管理を基盤として、健全な永久歯咬合の育成および育児支援を行っています。具体的には、う蝕の予防と治療、歯周疾患の予防と治療、咬合誘導処置、埋伏過剰歯の摘出、嚢胞の摘出、歯の再植、外傷歯の処置等、小児のために広範囲かつ高度の歯科医療を行っています。また、小児の歯科不安、歯科恐怖を予防・軽減するために、小児の行動科学に基づく診療を実施していること、および摂食嚥下機能障害児の機能療法を行っていることなども特徴の一つです。大学院生も可能な範囲で臨床を研鑽し、在籍者全てが一定期間後小児歯科専門医および障害者歯科認定医になれるようプログラムを組んでいます。また、本講座出身者は、小児歯科医療、障害者歯科医療、地域歯科保健管理等に活躍しています。

研究室のメンバーMEMBER

  • 准教授/阿部 洋子
  • 講師/園本 美恵
  • 助教/西村 貴子、今瀧 梨江、青木 翔、人見 さよ子、池田 まりあ

学生へのメッセージMESSAGE

本講座(Team ARITA)は、「Anything is possible(不可能なことはなにもない). The harder you work, the luckier you get(努力すればするほど、運はついてくる).」をモットーに、世界的なレベルで小児歯科学および小児歯科臨床に貢献することを目指し、講座員一丸となって日々研鑚を積んでいます。毎週、止揚会というオープン勉強会を開催しています。 子どもがよくわからない人、日本人の口腔健康状態を変えたい人、研究と臨床をしたい人、イノベーションを興したい人、人間に興味のある人、教育に興味のある人、特色ある臨床家になりたい人、摂食・嚥下機能を学びたい人などにぴったりの講座です。 Team ARITAは、夢と情熱のある人をお待ちしています。

研究活動

本講座では、ナノレベルの生体材料学から分子生物学まで広範囲な基礎的研究と、小児の口腔健康科学に関連する多種多様な臨床的研究を行っています。 主たる研究テーマおよび内容

  1. Smart materials:アパタイトアイオノマーセメントの開発に関するプロジェクト

    いまだに歯科治療は痛くて怖いものというイメージが強く、また、歯科医側も未だに治療中心から脱却できず、歯の喪失する率が高いのが現状であり、歯科治療のパラダイムシフトが求められます。本プロジェクトは、歯を切削せず充填することができ、無痛的なむし歯治療が可能な新規歯科材料を開発し製品化し、歯科界にイノベーションを興すことを目的としています。アパタイトアイオノマーセメント(AIC)は、従来のグラスアイオノマーセメント(GIC)にハイドロキシアパタイトを配合した新規強高度・高機能の接着性歯科材料で、高いむし歯予防機能および歯質の再石灰化機能を有し、米国、EU(英国、仏国、独国)、日本の特許を取得しています。AICを使いこなせば、歯科界の夢である「切削治療からの脱却」が実現し、痛くない怖くない、しかもどのような患者にも応用できる予防・口腔管理中心の“安全で優しい歯科医療”が達成できます。

  2. プラズマイオン工学的フッ素および銀イオン同時注入法による修復物・装置の表面改質に関するプロジェクト

    歯科医療において、小児から高齢者までのあらゆる年齢層において、歯冠修復、義歯、歯科矯正装置等のさまざまな歯科的用途として金属製やアクリルレジン製人工物が口腔内に装着されます。これらすべての人工物には複数の菌種より成る歯垢(バイオフィルム)が付着しやすく、むし歯、歯肉炎、口腔粘膜疾患等を惹起させやすくなります。本プロジェクトは、我々が考案したプラズマイオン工学的にフッ素イオンおよび銀イオンを同時注入する方法を用いて人工物表面を改質し、歯垢の付着を減少させ、かつ除去しやすくすることを目的としており、成功すればライフサイクルのどの時点においてもQOLが飛躍的に向上するものと考えられます。

  3. 乳歯および過剰歯由来歯髄幹細胞の再生医療学的応用に関するプロジェクト

    間葉系幹細胞は優れた自己複製能と増殖能を持ち、中胚葉、外胚葉、内胚葉系の細胞に分化できる多分化能を備えた体性幹細胞であり、脱落乳歯の残存歯髄や過剰歯の歯髄から間葉系幹細胞が単離、同定され、組織再生能が明らかとなっています。本プロジェクトは、乳歯および過剰歯由来の間葉系幹細胞を用いて再生医療に応用するための大規模な基礎的研究です。これまで、分子生物学的手法でヒト乳歯歯髄由来の幹細胞の維持・増強の関する研究、乳歯歯髄におけるアポトーシスや熱ショックタンパク質に関する研究を行いました。今後、本幹細胞を用いて歯髄組織の再生に関する研究へと展開し、さらに、本幹細胞は親子間の同種移植が可能であることから、将来展望としては医科との連携による各種臓器の再生医療への応用を目指しています。

  4. その他小児の口腔健康科学に関連する研究

    (1)歯の外傷の予防および治療に関する研究
    (2)小児の診療時の行動科学に関する研究
    (3)小児の地域口腔保健に関する研究
    (4)小児の摂食・嚥下機能発達に関する研究
    (5)小児の歯の萌出時期に関する研究
    (6)幼若永久歯の歯髄処置に関する研究
    など