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大阪歯科大学

10月4日、香里ヌヴェール学院高校スーパーサイエンスコースの1年生24名が本学楠葉キャンパスに来学、細菌学の実習を体験しました。これは2016年に同校と大阪歯科大学が締結した高大連携協定の一環として実施されるもので、本学での講義・実習体験は昨年に続いて2回目。

実習は、高校生が持参の白衣を着用して13時30分から始まりました。はじめに本学の川添堯彬理事長・学長が挨拶し、「全身の健康に影響を与える微生物の姿を初めて見る今日の実習は、皆さんにとって忘れられない体験になると思います。これをきっかけに、現在人類が苦しんでいる様々な疾患を治す、予防する医療系の職業を目指していただければ」と期待を寄せました。

実習を担当するのは、歯学部細菌学講座の沖永敏則教授と南部隆之講師。まずは沖永教授が、ヒトのカラダには何千兆という細菌(2kg程度)が住みついて、健康に重要な役割を果たしており、そのような細菌をすべて駆逐すると病気にかかることや、口の中には約100億の菌が常在し、その中には虫歯・歯周病という病気を引き起こす菌があることを易しく説明。沖永先生の軽妙な語り口に、生徒たちは一気に引き付けられたようでした。

続いて『あなたの虫歯菌、歯周病菌を観察しよう』という実習テーマに沿って、二人一組になり、本学歯学部2年生が実際に行っている「虫歯菌、歯周病菌のグラム染色」実験に着手。最初に、スライドガラス上の3種類の菌—食中毒を起こす黄色ブドウ球菌、虫歯菌(ミュータンス菌)、歯周病菌(ジンジバリス菌)—を、ゲンチアナ紫液等を使って染めていきます。このとき、不慣れな器具の扱いで自分の手を紫にしてしまう生徒も。
次に、染色した細菌を100倍の油浸レンズを取り付けた顕微鏡で観察。フォーカスを合わせるのが難しい顕微鏡ですが、1回でピタリと合わせる生徒もいます。サイズ1ミクロン(1ミリの千分の1)の細菌が映し出されると、あちこちで「見えた!」「スゴイ」と驚きの声が。真剣に顕微鏡を覗きながら、色・形・集合(の仕方)・大きさの違いに注意しつつ、iPad等に丹念にスケッチしました。

少時、スケッチの手を休めて、自分の手指に付着している菌(微生物)を観察。各自、事前に高校で片手をスタンプしたハンドシャーレが、本学で培養後(37℃・24時間後に室温で6日間)どのように変化したかを確認します。培養後の自身のシャーレを目にした生徒は、自分の手に沢山の菌がいることを知ってショックを受け、さらに菌が放つ悪臭に思わず顔をそむけることに。「マジで臭い」「お父さんの靴下より臭い」などの声が聞かれます。ここで沖永教授から、手洗いだけでは菌は残りやすく、手洗い後にウエルパスを使用することで菌が少なくなる旨の解説がありました。

実習のハイライトは「歯周病菌の臭いを調べよう」。生徒全員が教卓に集合し、最も強烈な、血液を摂取した歯周病菌の臭いを試します。一人ひとり勇気を出して臭いをかいだ途端「ウワッヤバイ」「吐き気がする」「鼻がつぶれた」と多くの生徒が悲鳴をあげます。そんな中「やみつきになる」と漏らす強者も。臭いの原因は硫化水素。実習が最高潮に盛り上がった瞬間でした。

実験後、生徒たちは学習した“ウエルパスでの丁寧な手洗い”を早速実践。沖永、南部両先生に熱心に質問する生徒もいました。
「近年、個人の食べ物の嗜好、性格なども口の中の細菌が左右しているのではないかといわれるようになってきた。腸内細菌の研究は盛んに行われているが、口の中の細菌はまだまだ未開拓の分野。大阪歯科大学の細菌学教室では、そんな未開拓な部分を開拓しようと日々研究しています。そして、そんな魅力あふれる細菌学の世界を歯科学生に教育しているのです」。沖永教授が締めの言葉を述べると、一同そろって沖永、南部両先生に「ありがとうございました」と挨拶。高大連携の特別実習は無事終了しました。

実習後のアンケートでは、20人の生徒が本日の講義内容は「とても良かった」と回答。18人が歯学について「とても興味を持った」「興味を持った」と、また半数が、高校でのこれからの学習のモチベーションについて「とても高くなった」「高くなった」と答えていました。菌の色や臭いに関心を持った生徒も多くいたほか、「自分は菌に生かされていると感じた」「思っていたより身の周りには菌が多くあり、潔癖症の人の気持ちが分かった」「自分で新しい菌を見つけたい」「今日の講義を通じてより歯学部で学びたいと感じた」などと感想を寄せてくれました。生徒たちにとって長く記憶に残る学びとなったようでした。
一方、実習を終えて「高校生が興味を持って熱心に取り組む姿を見て(こちらも)楽しく、明るい未来が感じられた」と沖永教授。南部講師は「手を動かして自分の菌を観るということで、積極的に、楽しんでもらえてよかった」とそれぞれ感想を話していました。

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