このほど、本学歯学部欠損歯列補綴咬合学講座の三野卓哉講師らの研究グループが、歯科治療を受ける患者の不安状態を、顔イラストを用いて評価する質問票を開発しました。
これは、不安と恐怖の強さを表した6種類の顔イラストを用いて、患者に自身の状態に合うものを選んでもらうことで、その心理状態を短時間で客観的に評価できるようにするものです。また、患者の不安や恐怖を特性(患者の性格傾向)と状態(直面した状況によって変化する一過性)に分けて評価できることも特徴です。
患者が歯科治療に対して不安や恐怖を強く覚えてしまうと、治療時の痛みをより強く感じたり、説明の理解がおろそかになる恐れがあります。そうした歯科治療に強い不安や恐れを抱く歯科恐怖症は、成人の有病率が5~22%ほどと報告されており、決して少なくない人数に該当する事例です。
医科では治療時の不安を特性と状態に分けて評価するツール(STAIなど)が既に開発されていたものの、歯科現場で活用できるツールはこれまでなく、そこから三野講師らの研究グループが「顔評価尺度を使用して、歯科特性不安 (DTA)、歯科特性恐怖 (DTF)、歯科状態不安 (DSA)、および歯科状態恐怖 (DSF) を測定する 4 項目の質問票の信頼性と妥当性を評価すること」を目的として、研究開発を試みることとなりました。
本研究の論文は「The Journal of Advanced Prosthodontics」(8月20日)に掲載されており、この中で、研究グループは「新しく開発された質問票は、臨床使用において許容できる信頼性と妥当性を備えており、歯科不安や恐怖に関する研究や患者固有の歯科治療の提供に有用であることを示唆している」と結論を述べています。
今回の研究開発について、既に『日本歯科新聞』や“HealthDay News”など、複数のメディアが取り上げており、今後他の研究や歯科治療現場への活用などについてますます注目が集まりそうです。
【本ニュースに関連する記事】※外部リンク
◆@DIME「 歯科患者が不安や恐怖を6種類のイラストから選ぶ質問票を開発、診療にどう役立つ?」(2024年10月9日掲載。提供元:HealthDay News)◆Care net「歯科患者の不安を客観的に評価できる質問票」(2024年10月22日掲載。提供元:HealthDay News)