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大阪歯科大学

本学中央歯学研究所の本田義知准教授と京都工芸繊維大学の田中知成准教授が共同開発した、新しい骨再生材料が6月22日付けで特許登録されました。

◆発明の名称:機能性架橋構造体及びその製造方法並びに医療材料
◆特許権者:国立大学法人京都工芸繊維大学、学校法人大阪歯科大学
◆発 明 者:田中知成、本田義知

これは、骨再生の専門家である本田先生が2012年に本学に赴任して最初に取り組んだ研究です。先生の話によると、歯周病、外傷、癌、口唇口蓋裂など様々な口腔疾患によって歯の周りを支える歯周組織の骨(歯槽骨)が無くなってしまうと、インプラントなどが打てなくなります。そのため、歯科では骨を再生する研究が盛んに行われているとのこと。また近年、インプラント周囲炎や歯周病など細菌感染し炎症が起きている口腔内では、従来の自家骨による骨移植や骨補塡材による骨再生が難しいことが問題になっています。これらの背景から、免疫や炎症を制御できる新たな骨再生材料の開発を目的として、この研究は始まったといいます。

そこで、本田先生が着目したのは、エピガロカテキンガレート(EGCG)というお茶の成分・茶カテキン。抗炎症作用、抗菌・殺菌作用、コレステロール低下作用など種々の効能で知られるメジャー物質・カテキンの骨再生医療への応用は、in vitro(培養実験)ではそれまで複数の論文で報告されていました。一方、in vivo(生体内)では、骨再生を促進した報告は開発を始めた2012年当時、ほとんど無かったそうです。本田先生は先ずこの違いに着眼し、EGCGの構造式を検討。ある閃きを得ます。「EGCGはOHという水酸基に囲まれており、他の物質に吸着しにくい。EGCGを生体親和性の高い物質(ゼラチン)と化学結合させれば、患部での貯留性が高まり、生体内でも優れた骨形成能を発揮するのではないか?」

そこで、水酸基と高分子を効率的に合成する技術を持たれている化学合成の専門家で、古くからお知り合いの田中知成先生に話を持って行き、この新規骨再生材料(EGCG結合ゼラチンスポンジ:EGCG-GS)開発の研究が始まりました。しかし、最初は失敗だらけだったと言います。過去の経験から骨再生材料として応用するには、スポンジ状の物質が望ましいと知っていましたが、最初は、粉状の物質が多くできるばかりでスポンジ状にはなりませんでした。数多くの試行錯誤を繰り返した後、スポンジ状の材料ができる条件を発見し、マウスやラットを使った動物実験でEGCG-GSの骨形成能評価を行った結果、化学結合がなされるある条件では、カテキンの効果が生体内で発揮され骨が形成されることが分かりました。本特許は、これらの合成方法と骨再生に関わる内容となっているそうです。特許庁の審査を経て、出願から4年、本田先生にとっては四つ目の特許獲得となりました。

現在、EGCG-GSの研究は更に進んでおり、自家骨や、既存の骨補塡材を凌ぐ骨再生能を示す事を明らかにしているそうです。研究過程を振り返り、「馬場俊輔教授、松本尚之教授、橋本典也准教授、戸田伊紀准教授を始めとする講座横断型でフランクに再生医療を研究している本学再生グループの先生方、多くの院生、職員の皆様に頂いた有形無形のご協力のお陰です」と話していました。この研究を進めつつ、将来的な臨床応用を視野に入れ情報収集に努めている本田先生。特許に関しては、このほかにも出願中1件、出願準備中1件を抱えていますが、「今回は大阪歯科大学に来て創ったアイデアで、大阪歯科大学から出願し、多くの皆様のお力をお借りして達成した思い入れのある特許。とてもありがたく思っています」と静かに喜びを語ってくれました。

►新規骨再生材料開発に関する詳細はこちらをご覧ください。

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