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大阪歯科大学

9月1日、第1回医療保健学部生涯学習セミナー『これからの歯科保健医療と医療人像を考える』が本学創立100周年記念館で開かれました。このセミナーは、医療保健学部や歯学部の在学生・卒業生、専門学校卒業生等、主に歯科医療関係者を対象に、今の歯科医療に必要な知識を学ぶために、医療保健学部生涯学習委員会が企画したもの。記念すべき第1回は、地域包括ケアシステムの推進が叫ばれている現状に鑑み、これからの地域医療の一端を担う歯科医療のあり方について、現状に詳しい二人の講師が講演を行いました。

セミナーは田中昭男副学長の開会挨拶、要田洋江委員長による趣旨説明の後、医療保健学部の糸田昌隆教授が「戦後日本の医療政策と歯科医療~地域包括ケアシステムに至るまで~」と題して講演。高齢化と共に整備され、充実してきた日本の医療政策の流れを振り返った上で、人口構造の変化→疾病構造の変化→医療需要の変化が起こり、需要に合った医療提供体制の整備が必要なときに来ていると話しました。さらに、歯科では70歳を超えると受診率が急激に低下することを指摘。高齢者の医療現場の多くは、病院や施設であるにもかかわらず、そうした所の高齢者には歯科医療が十分に提供されていないと問題を提示し、社会の診療ニーズの変化に対応していくためにも「本学附属病院に地域口腔支援センターのようなものができれば」と希望を寄せました。

続いての講演では、京都市南口腔ケアセンターの徳地正純センター長が「地域に求められる在宅歯科医療とは~南口腔ケアセンターの活動より~」をテーマにお話ししました。同センターは、地域連携の窓口となるべく、1998年に京都府歯科医師会南支部(現京都市南歯科医師会)の下部組織として設立。現在は南歯科医師会の協力歯科医師と訪問歯科衛生士、計30名ほどで構成されています。
地域完結型の在宅歯科医療を目指し、南口腔ケアセンターは如何にして連携づくりをしてきたか。徳地先生からは、デイサービスへのボランティア訪問事業に始まる、20年にわたる連携の歴史が紹介されました。ネットワーク力をキーワードに、仲間をつくり、「頼まれたらノーと言わない」で多職種との垣根をなくす、医師会等他の組織と連携し、地区行政へアプローチするなどなど。社会ニーズに目をそむけず、真摯に歯科医療に取り組む関係者の姿が髣髴とするお話の数々でした。
「地域包括ケアシステムの中に入っていかなければ歯科医療は取り残される」。結びの一言が重く響いた徳地先生の講演でした。

講演後、要田委員長は、「利用者にとって素晴らしい歯科医療となるように、医療従事者の皆さんに頑張ってほしい」との思いからセミナーを企画したと話し、本日の講演を通して「歯科医療は、地域医療において、福祉の面からも重要な役割を持っていることが理解できた。歯科衛生士、歯科技工士ともに大いに領域を拡大し、地域医療の役割を担う人材として社会に出て行ってほしい」と期待を示しました。最後に、柿本和俊口腔工学科長が閉会のことばを述べ、セミナーは終了しました。
参加した医療保健学研究科の大学院生は、「徳地先生が話された、歯科衛生士の歯科医師からの自立というのは、保険制度的に難しい点もあると思うが、これからは自分で考え、歯科衛生士のスキルを発揮できるような仕事をしていかなければ」と話していました。

委員会では今後も随時セミナーを企画していく予定。今後の開催については、本学ホームページでご案内いたします。医療関係者でない皆さまもご参加いただけますので、ご関心のある方は是非次回お立ち寄りください。

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