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大阪歯科大学

本学医療保健学部の濱島淑惠准教授が2月19日、NHK総合テレビの『かんさい熱視線』(19時30分~57分)にリモートで生出演しました。
この日の特集テーマは「ヤングケアラー 失われた“未来”」。番組では、濱島先生をヤングケアラー(家族の介護を担う子どもや若者)研究の第一人者と紹介し、詳しく話を聴きました。

「(ヤングケアラーは)看過できない問題だということを私たちは認識する必要があると思います」。濱島先生はまずこう切り出しました。家事や感情的なサポート、兄弟の世話など、大したことはないと思われがちですが、精神的負担が大きかったり、長時間に及ぶことがある。そうすると、学校に行けない、友人づきあいができないということになり、人生選択が狭められたり、健康を害するといったケースがみられる。人間の基礎をつくる重要な時期にこうしたことが起きると、その影響は生涯にわたる。そういう意味で、ヤングケアラーは「個人の問題でなく、社会の問題としてとらえる必要がある」と強調しました。

濱島先生が2016年に大阪府で実施した調査では、高校生の20人に1人がヤングケアラーであることが明らかに。ひとり親世帯、経済的困難—こうした条件下にヤングケアラーは多くみられるといわれており、「背景には社会の構造的な問題がある」と指摘しました。

なぜ支援の手が届かない?

介護される家族、介護するヤングケアラーが相互に頼れるところはないのか。これについて、濱島先生は、ヤングケアラー、学校、医療や福祉の専門職—それぞれの事情を説明したうえで、「ヤングケアラーは児童虐待、不登校、非行など、どのジャンルの児童福祉の問題にも該当してこない。また、さまざまな支援の対象からも外れ、エアポケットにはまったような状態であり、そのため支援がなかなか届かないという実態がある」と述べました。

ケア後も続く苦悩をどう支える?

濱島先生は番組に登場した元ケアラーの朝田健太さんと共に、ヤングケアラーの集い<ふうせんの会>(本学牧野キャンパスで奇数月の第3日曜開催)を主宰しています。こうした経験者同士がつながれる場は、孤立・孤独を解消するのみならず、「参加するだけで、それが社会参加になり、社会との接点になっていく。そのことを礎にして今度は自分の人生の再構築をしていく。共に歩んでくれる・語ってくれる・考えてくれる仲間がいるということが重要だと思います」。濱島先生は会の意義をこう語りました。

支援の仕組みとして、いま何が必要か?

この先、支援に向けてどんな体制が必要か。この問いに対し「まずはヤングケアラー支援の拠点・窓口を」と答えた濱島先生。「ヤングケアラーがいた場合、まずつながるところ、ワンストップで支援につながるところが必要。ヤングケアラーの支援には福祉の領域の連携や、教育と福祉の連携が必要になってきます。そうしたところをつなぐ、ヤングケアラー支援の拠点・窓口が全国に広がっていけば」と期待を示しました。

いま私たちにできることは…

ヤングケアラーに対して、私たち周りはどう対応すればよいのでしょうか。「第一にヤングケアラーに対する理解を広めることが重要だと思います」。濱島先生はこう述べたうえで、単にケアの大変さを理解するだけでなく、ヤングケアラーがケア経験の中で得たもの、その価値を評価することが必要と補足しました。
支援については「学習支援や子ども食堂、居場所づくりなど、さまざまな支援にヤングケアラーという視点をいれて工夫をしていく。これによってかなりヤングケアラーの支援は進むのではないか」と提言。最後に濱島先生は次のように訴えました。「ヤングケアラー支援というのは途方もないことではなく、明日からできることがある。それをそれぞれ考えていただきたい」

ヤングケアラーが生きやすい社会実現のために。濱島先生の確固たる思いが伝わってくる放送でした。

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