第17回日本デジタル歯科学会学術大会が2026年5月9、10日に大阪市で開催され、本学歯学部欠損歯列補綴咬合学講座の三野卓哉准教授が41演題の中から「優秀発表賞」に選ばれました。
三野准教授の受賞演題は「サージカルガイドプレートを用いたインプラント埋入手術の誤差を予測する機械学習スタッキングモデルの構築 —後向き観察研究—」。これは、熊本大学の諸岡健一教授、兵庫医科大学の徳本佳奈臨床講師や開業医の清水浩明先生らとの共同研究として実施されたもので、研究成果は学術誌『International Journal of Implant Dentistry』にも発表されています。
サージカルガイドプレート(SGP:インプラントを計画した位置へ正確に埋入するためのマウスピース状の補助装置)を用いたインプラント治療では、高い精度が期待できます。しかし、まれに計画した位置から大きくずれて埋入される症例も報告されており、その誤差を手術前に予測する方法は確立されていません。もし術前シミュレーションの段階で埋入誤差を予測できれば、より安全で確実なインプラント治療につながると考えられます。
本研究では、SGPを用いたフルガイド下(ドリル操作からインプラント埋入までガイドを装着したまま行う方法)インプラント手術を予定した181症例を対象としました。診療録から年齢、性別、SGPの種類、残存歯数、欠損の状態、埋入するインプラントの種類などの情報を収集するとともに、術前CT画像から骨の硬さや骨の傾きを評価しました。また、手術後のCT画像と術前CT画像を重ね合わせ、実際に埋入された位置と計画位置とのずれ(埋入誤差)を測定しました。これらの情報を基に、人工知能(AI)による機械学習を用いて、手術前に「埋入誤差が大きくなるかどうか」を予測するモデルを構築しました。複数のAIを組み合わせることで、より高い予測精度を目指しました。
その結果、477本のインプラントのデータを用いた検証では、埋入誤差が大きくなる症例を約73%、誤差が小さい症例を約86%の精度で判定できました。また、複数のAIを組み合わせたモデルは、単独のAIよりも高い予測性能を示しました。
本研究により、手術前の情報からインプラント埋入誤差を高い精度で予測できる可能性が示されました。今後、このような予測システムが実用化されれば、手術計画の見直しや術式の選択に役立ち、より安全で確実なインプラント治療につながることが期待されます。
ポスターの受賞掲示を見落とし、表彰式で突然名前を呼ばれて驚いたという三野先生。共同研究機関の熊本大学諸岡教室、兵庫医科大学岸本教室、岡山大学窪木教室の諸先生方への謝辞とともに、「本研究は、単に業績を積み重ねることを目的としたものではなく、その成果を国民や社会へ還元してこそ、本当の価値があると考えています。今後も実用化を見据えた研究を進めてまいります」と受賞の感想を話してくれました。

