CLOSE

大阪歯科大学

全国の歯学部学生が研究成果やプレゼンテーション能力を競う令和7年度の「スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラム(SCRP)日本代表選抜大会」(主催:公益社団法人日本歯科医師会)において、大阪歯科大学歯学部3年の足立 梨夏あだち りなさんが第3位に入賞し、10月8日、表彰楯授与式を楠葉キャンパスで行いました。
第31回となる今大会には全国18大学が参加し、8月5日に東京・歯科医師会館で英語による発表と質疑応答の審査が実施されました。
本学としては3年ぶり8回目の上位入賞となります。(優勝:東北大6年生、準優勝:鶴見大5年生)

受賞した研究テーマは「タンパク質含有マイクロ粒子による口腔がん細胞株へのタンパク質の直接送達」。機能保存が重視される口腔がん治療において、がん細胞内へ治療用タンパク質を直接送達する方法が近年注目されていますが、従来の遺伝子導入法だと変異リスクや効果発現までのタイムラグが課題でした。そこで足立さんたちはがん細胞で亢進している細胞内取り込み経路であるマクロピノサイトーシスに着目しました。タンパク質含有マイクロ粒子(Protein·MPs)を作成し、これが口腔がん細胞株に取り込まれるかどうかを検証しました。その結果、Protein·MPsを用いることで様々な口腔がん細胞の細胞質に効率よくタンパク質を直接送達できることを明らかにしました。さらに、タンパク質の電荷や分子量にかかわらず細胞質に送達できることを見出したのです。

左から牧田准教授,藤原主任教授,足立さん,平井講師,延藤さん

今回の研究は、代表研究者の足立さんと共同研究者の延藤 和樹のぶとう かずきさん(歯学部4年)が、ファカルティーアドバイザーを務めた化学教室の牧田佳真准教授、生物学教室の平井悠哉講師の指導のもと、チームで取り組んだものです。
チーム結成のルーツは2年前にさかのぼります。足立さんが延藤さんと出会ったのは、1年生3月の本学学生短期海外研修でイギリスに留学した時でした。そこで延藤さんは足立さんの英語の堪能さや人柄を知ったと言います。
延藤さんはこの年度のSCRPに出場したものの、惜しくも上位入賞を逃していました。その後に再挑戦を考えたときに、足立さんのことを思い出したそうです。
声をかけられた足立さんも元々SCRPに強い関心があり、これを「いいチャンス」と考えました。こうして、二人の思いが一致し、共に研究を進めることとなりました。

生きた細胞を扱う実験は気の抜けない作業で、講義の合間を縫って取り組む日々が続きました。
特に当時2年生だった足立さんにとっては、同級生に研究仲間がいない中での挑戦でしたが、「先生方に教えていただきながら、少しずつ理解が深まりました。失敗も多かったけれど、うまくいった時は本当にうれしかったです」と当時を振り返ります。

表彰式では、延藤さん、牧田准教授、平井講師や化学教室の藤原主任教授が見守る中、川添堯彬理事長・学長から足立さんに表彰楯が手渡されました。
川添理事長・学長は「『素晴らしい』の一言に尽きます。今回の受賞は本学にとっても名誉であり、足立さんにとっても一生の思い出になるでしょう」と称えました。

今回の受賞に、足立さんは「先生方と研究に取り組む中でたくさんの学びと刺激をいただきました。この経験を通して研究の楽しさを実感できたことに感謝しています」、
延藤さんは「前回のリベンジと思っていた中、第3位まで持って帰っていただいて感謝しています」と喜びや感謝を述べました。
指導した牧田准教授は「分からないことを素直に聞く力と、それを理解する力に優れた素晴らしい学生でした。さらに、本番に強く、度胸のある姿が印象的でした」と話し、
平井講師も「失敗を乗り越えて、自分の意見をしっかり言えるようになった姿や本番での聴衆を強く引き付けるプレゼンが印象的でした」と学生たちの成長を称えました。

また、延藤さんから「自分も別の機会で、発表の場に立ちたいと思っています」、
足立さんも「審査員の方々に『すごい研究だから長くやって活かせるように』とも言ってもらえて、この研究をさらに続けたいです」
と未来に向けた意気込みを語っていただきました。

今回の成果を励みに、さらなる挑戦を誓う若き研究者たち。今後の活躍がますます期待されます。

関連記事